スマートフォン、コネクテッドカー、工場のIoT機器。これらが、メーカーが違っても互いにつながるのは、通信の「標準規格」があるからです。しかし、その標準規格には、特定の企業が持つ標準必須特許(SEP:Standard Essential Patent)が数多く含まれています。もし特許権者が「うちの技術は使わせない」と言えてしまうなら、規格そのものが成り立ちません。
この矛盾を和らげるために、特許権者が標準化団体に対して行う約束が、FRAND(フランド)です。この記事では、FRANDの意味、交渉の「誠実さ」を測る国際的な物差し、差止め(販売の停止)のリスク、そして2025〜2026年の日本の動きまで、初心者の方に向けて整理します。
SEPの基本は、下記の関連記事をご覧ください。

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、法的助言ではありません。法制度、判決、各国の運用は変わることがあります。個別の案件は、SEPの実務経験がある弁護士・弁理士にご相談ください。
この記事でわかること
- FRANDとは何か、何が約束され、何が決まっていないのか
- ホールドアップとホールドアウトという、2つの悪用の懸念
- 「誠実な交渉」とされる、国際的な標準的ステップ(Huawei v ZTE)
- 差止めのリスクが、国によってどう異なるか
- 2025〜2026年の日本の動き(初のSEP差止め、東京地裁の審理要領)
- 筆者の見解:FRANDは「価格の約束」ではなく「手続の約束」である
- 通知(警告書)を受けたときの考え方
用語集(先にここだけ読んでもOK)
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| SEP | 規格に準拠する製品が避けて通れない特許 |
| FRAND | 公正・合理的・非差別的な条件でライセンスするという約束 |
| 実施者 | 規格に準拠した製品を作って売る側(特許を使う側) |
| ロックイン | 規格が決まった後、その技術を使わざるを得なくなる状態 |
| ホールドアップ | 特許権者が、差止めをちらつかせて、過大な条件をのませようとすること |
| ホールドアウト | 実施者が、誠実に交渉せず、時間を引き延ばしながら技術を使い続けること |
| クレームチャート | 特許の請求項と、規格や製品との対応を示す比較表 |
| 差止め | 裁判所が、侵害品の製造・販売の停止を命じること |
| ライセンスを受ける意思(willingness) | FRAND条件でライセンスを受けようとする、誠実な態度 |
| 権利濫用 | 権利の行使が、信義則に反するなどの場合に、認められないこと。日本では、FRANDの抗弁がこの考え方に基づく |
| AFA(Access for All) | 権利者がライセンスの相手方(サプライチェーンのどの段階か)を選べるという考え方 |
| 累積ロイヤルティ | 1つの規格について、実施者が全権利者に支払う料率の合計 |
1. FRANDとは何か
1-1. 特許権者が約束していること
標準化団体は、規格を作る過程で、参加企業に、自社の特許が規格に必須になり得る場合は開示し、FRAND条件でライセンスする用意があると宣言するよう求めます。特許権者がこの約束をした上で、その技術が規格に採用されます。
1-2. 三つの言葉
| 英語 | 日本語 | 一般的な意味 |
|---|---|---|
| Fair | 公正 | 不当な条件を押し付けない |
| Reasonable | 合理的(妥当) | 経済的に合理的な対価にする |
| Non-Discriminatory | 非差別的 | 同じ立場の企業を、不当に差別しない |
ここで押さえておきたい点があります。
- この三つは、法的に厳密に分けて定義されているわけではありません。実務や裁判では、三つをまとめて「FRANDかどうか」として判断することが多く、たとえば「Fairは手続の公平性、Reasonableは金額」と、きれいに分けられるものではありません。
- 標準化団体によって、言葉が異なります。ETSIはFRAND、ITU-Tなどは「RAND」(Fairを含まない表記)、IEEEは独自の特許方針を採っています。
- 具体的な料率や条件は、法律で決まっていません。何がFRANDかは、当事者の交渉で決め、折り合わなければ、裁判所や仲裁で争われます。
- 「非差別的」は、全員に同じ料金という意味ではありません。詳しくは、非差別的(ND)の解説をご覧ください。
1-3. 約束の性質
ETSIの知的財産権ポリシーでは、FRANDの約束は取り消せないものとされ、特許が第三者に譲渡されても、新しい権利者がその約束を引き継ぐことが求められています。
2. なぜFRANDが必要なのか
2-1. ロックインの問題
技術が標準に決まると、メーカーはそれを使わなければ製品を作れなくなります(ロックイン)。通常の特許なら、使いたくなければ別の技術で迂回できますが、SEPは迂回できません。
2-2. 二つの「悪用」の懸念
| 名称 | 意味 | 懸念される行為 |
|---|---|---|
| ホールドアップ(待ち伏せ) | 特許権者が、販売差止めをちらつかせて、過大な条件を求める | 規格が普及した後に、法外なライセンス料を要求する |
| ホールドアウト(居座り) | 実施者が、誠実に交渉せず、技術を使い続ける | 交渉を引き延ばしながら、製品を売り続ける |
FRANDは、この両方を抑え、バランスを取るための仕組みです。世界の裁判所や政府の指針は、どちらの悪用も防ぐという視点で作られています。
3. FRANDの中身は誰が決めるのか
3-1. まず当事者の交渉
FRANDの具体的な内容(料率、算定の基準、対象となる特許の範囲、地域、期間)は、まず当事者の交渉で決まります。
3-2. 料率を考える、代表的な方法
- トップダウン方式:規格の実施に支払う総額の妥当な水準を想定し、そのうち権利者のSEPの割合を掛けて、料率を求める方法。
- 比較ライセンス方式:似た条件で結ばれた既存の契約を参考に、料率を決める方法。
算定の基準(部品の価格か、最終製品の価格か)については、下記の関連記事をご覧ください。

3-3. 折り合わなければ
当事者間で折り合わない場合は、裁判所、仲裁、調停などで争われます。どの国で争うかは、戦略の一部になります。
4. 「誠実な交渉」の物差し:Huawei v ZTE
4-1. 欧州司法裁判所の枠組み
2015年7月16日、欧州連合司法裁判所(CJEU)は、Huawei v ZTE事件で、FRAND宣言をした特許権者が、差止めを求める際の判断枠組みを示しました。双方の誠実さを、段階的に確認します。
| ステップ | 主体 | 求められる行為 |
|---|---|---|
| 1 | 特許権者 | 対象の特許と、侵害の態様を特定して、実施者に通知する |
| 2 | 実施者 | FRAND条件でライセンスを受ける意思を表明する |
| 3 | 特許権者 | 料率と、その算定方法を示した、具体的な書面のオファーを出す |
| 4 | 実施者 | オファーに同意しない場合、速やかに、書面で具体的な対案を出す |
| 5 | 実施者 | 対案が拒否された後も技術を使い続けるなら、適切な担保(銀行保証や預託など)を提供する |
判決は、実施者が「遅延戦術」を取らないことも求めています。ドイツの裁判所は、この枠組みを、実施者に対して厳しく適用する傾向があり、2020年5月の連邦通常裁判所(BGH)判決(Sisvel v Haier)以降、担保の提供が遅れることも、不利に評価されます。
4-2. 日本の指針
日本では、経済産業省が、2022年3月に「標準必須特許のライセンスに関する誠実交渉指針」を策定しました。交渉の各段階で、権利者と実施者が取るべき対応を整理しており、たとえば権利者がクレームチャートを提示すべきことも示されています。
また、特許庁は「標準必須特許のライセンス交渉に関する手引き」を、2018年6月5日に初版として公表し、2022年6月30日に第2版へ改訂しています。これらは、裁判所を拘束するものではありませんが、交渉の誠実さを考える際の参考になります。
4-3. 実務上のポイント
- 意思の表明は、早く、書面で。相手の条件に同意するという意味ではないことが分かる文面にする。
- 「高いから払わない」だけでは足りません。対案には、客観的な算定の根拠を添える。
- 記録を残す。交渉の経過(日時、内容、提出した資料)は、後に「誠実だった」ことを示す証拠になる。
- 担保の準備を。差止めのリスクが高い国では、担保の提供も検討する。
5. 差止めのリスクは、国によってどう違うか
5-1. 地域別の概観
| 地域 | 特徴 | 実施者が意識したい点 |
|---|---|---|
| ドイツ・欧州(UPCを含む) | 差止めが中心で、判断が速い。ホールドアウトを厳しく見る傾向 | 早期の意思表明、対案、販売データの開示、担保の準備 |
| 英国 | 裁判所が、世界全体のFRAND条件を決める権限を持つ。暫定ライセンスの判断も | 裁判所の判断に従う姿勢を示すことが有利に働くことがある |
| 米国 | 損害賠償が中心。国際貿易委員会(ITC)による輸入差止めや、禁訴令の枠組みも | 米国向け製品の輸入差止めリスクの確認 |
| 中国 | 世界全体の料率決定。禁訴令・反禁訴令 | 管轄をめぐる争いに巻き込まれる可能性 |
| 日本 | 差止めは権利濫用の枠組みで判断。2025年に東京地裁で判断が分かれ、2026年1月に審理要領を公表 | 販売データなど、算定に必要な資料を早期に整える |
欧州では、司法の運用をめぐって緊張もあります。たとえば、欧州委員会が、ドイツの裁判所の判断枠組みに批判的な意見書を提出したと報じられています。各国の最新の動向は、個別に確認が必要です。
5-2. 日本:2014年の枠組みと、2025年の判決
日本の基本は、2014年5月16日の知財高裁大合議判決(Samsung v Apple)です。
- FRAND宣言をしたSEPの特許権者が、FRAND条件でライセンスを受ける意思のある実施者に差止めを求めることは、権利の濫用にあたる。
- FRAND条件でのライセンス料相当額を超える損害賠償も、特段の事情がない限り、権利の濫用として制限される。
この枠組みは、今も維持されています。
2025年4月10日、東京地裁(Pantech v ASUS)は、侵害を認める一方、ASUSがライセンスを受ける意思のある実施者と評価されたため、差止めを認めませんでした。料率の見解の相違だけでは、意思がないとは言えないとされています。
2025年6月23日、東京地裁は、Pantech v Google事件で、グーグルのスマートフォン「Pixel 7」の販売等の差止めを命じました。報道によれば、日本の裁判所がSEPに基づく差止めを認めた初のケースとされ、次のような経過が指摘されています。
- 2024年7月23日、両社は、グローバルなSEPのポートフォリオ全体の和解協議に合意した。
- 裁判所は、グーグルに対し、2014年の大合議判決の算定の考え方に基づく和解案の提示を求めた。
- しかし、グーグルが、ライセンスの算定に必要な情報(日本での販売数量、売上など)を開示せず、和解案も示さなかったと報じられています。裁判所は、これをもって、FRAND条件でライセンスを受ける意思がないと認定しました。
つまり、枠組みが変わったのではなく、枠組みを適用した結果として、「意思がない」と認定されたということです。
ただし、この件の結論は、一つの判決だけでは語れません。
- 2025年7月10日、大阪地裁は、別の機種(Pixel 7a)に関するパンテックの請求を棄却しました。
- 2025年12月、両社はグローバルに和解し、知財高裁の判断は示されませんでした。
詳しくは、下記の関連記事をご覧ください。

5-3. 2026年1月:東京地裁の審理要領
2026年1月20日、東京地裁の知的財産権部は、「標準必須特許に基づく特許権侵害訴訟の審理要領」を公表しました。ねらいは、特許権者の世界全体のSEPポートフォリオについて、FRAND条件でのライセンス料の合意形成を促し、グローバルな紛争を解決することです。主な内容は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原告(特許権者) | 訴状の段階で、算定の根拠を示した、世界全体のFRAND料率を提案することが期待される。トップダウン方式、比較ライセンス方式、または組み合わせで示せる |
| 被告(実施者) | 答弁で、原告の算定に対する認否と、算定の根拠を示した対案を示すことが期待される |
| 裁判所 | 原則として、第1回期日などで和解を勧め、和解のための協議を計画的に進める。裁判所自身が和解案を示すこともある |
| 料率以外の条件 | 第1回期日の後、速やかに協議する |
| 証拠の提出 | 被告が、世界全体のFRAND料率の算定に必要な証拠を自発的に出さない場合、ライセンスを受ける意思がないと判断され得る |
ここで注意したいのは、日本の裁判所は、判決で、外国の特許を含む世界全体の料率を一方的に決められないと解説されている点です。審理要領は、あくまで、当事者の合意による解決を促す手続です。同様に世界全体の料率を目指す、SEP調停の審理要領も、並行して公表されています(運用の詳細は、裁判所の公式資料で確認してください)。
5-4. 実務への影響
- 日本で訴えられたり、調停を申し立てられたりした場合は、販売数量、金額などのデータを、早い段階で整理する必要があります。
- 裁判所の指示や、情報の提出の求めに、合理的な理由なく応じないことは、差止めのリスクを高めます。
- 運用の実績は、これから積み重なる段階です。
6. 欧州の規則案の撤回
欧州委員会は、2023年4月に、SEPの規則案を提案しました。SEPの登録、必須性の確認、FRANDに関する手続などを整える内容でした。しかし、合意の見込みがないとして、委員会は、2025年2月11日に撤回の方針を示し、同年7月に正式に撤回しました。欧州議会は、2025年11月25日に、撤回の適否を争う提訴を決議しています(賛成334、反対294)。
したがって、現時点で、EUには、統一的なSEPのルールがなく、各国の裁判所と、欧州統一特許裁判所(UPC)の判断が、実質的なルールになっています。今後の制度の方向性は、確定していません。
7. 筆者の見解:FRANDは「価格の約束」ではなく「手続の約束」である
ここからは筆者の意見です。
7-1. FRANDは、金額を約束するものではない
FRANDが約束しているのは、「公平な手続で、妥当な条件を提示し、誠実に交渉する」ことであって、特定の金額ではありません。「FRANDだから安いはずだ」と考えて交渉に臨むのは、危険だと考えます。FRANDの中身は、算定方法、比較ライセンス、累積ロイヤルティなどの積み上げで決まります。金額を左右するのは、FRANDという言葉ではなく、算定の根拠です。
7-2. FRANDとAFAは、衝突しない
FRAND宣言は、規格にアクセスしたい者に対して、技術を使える道を閉ざさないという約束だと、筆者は理解しています。この理解は、権利者がライセンスの相手方(サプライチェーンのどの段階か)を選ぶこと(AFA)と、両立します。実施者は、完成品メーカーとして、交渉の当事者になる限り、FRAND条件でライセンスを受ける機会が確保されているからです。
これに対し、LTAを支持する立場は、FRAND宣言を、「希望するすべての者にライセンスする義務」を含むものと読みます。この読み方の違いが、LTAとAFAの対立の出発点です。詳しくは、下記の関連記事をご覧ください。

7-3. 誠実さは、「内心」ではなく「記録」で測られる
Huawei v ZTEの枠組みも、東京地裁のPixel 7の事件も、裁判所が見ているのは、当事者の「心の中」ではなく、時系列に残る行動です。意思を示した書面、根拠のある対案、開示したデータ、提供した担保。これらが、誠実さの中身になります。交渉の誠実さは、相手と裁判所の双方に向けて、記録で証明するもの、と考えて動くことを勧めます。
7-4. 算定の基礎を最終製品に置くなら、情報を出す責任も完成品メーカーにある
筆者は、算定の基礎を最終製品に置く考え方(EMV)を支持します。この考え方では、算定に必要な数字(販売数量、販売価格)を持っているのは、完成品メーカーです。そのため、完成品メーカーには、これらの情報を、秘密保持を整えた上で、適切に開示する責任が生まれます。Pixel 7の事件で、情報を開示しなかったことが「意思がない」と評価されたのは、その象徴だと考えます。最終製品ベースは、権利者に有利な考え方であるだけでなく、完成品メーカーに、説明責任を負わせる仕組みでもあります。
7-5. 別の見方
- 実施者側には、「FRAND宣言があっても、差止めを背景に交渉が進む現状は、ホールドアップを十分に抑えていない」という見方があります。
- 権利者側には、「実施者のホールドアウトこそが、交渉を歪めている」という見方があります。
- 販売データなどの開示は、実施者にとって、営業秘密を含むため、負担が大きいという事情もあります(秘密保持命令などの手続きで、一定の保護は可能です)。
どちらの立場にも根拠があります。ご自身の立場に応じて、両方の見方を踏まえて、判断してください。
8. 実務対応:通知(警告書)を受けたら
8-1. 最初にやること
- 無視しない・放置しない。受領日と受領経路を記録し、通知書を保管する。
- 専門家に相談する。SEPの実績がある、弁護士・弁理士に早期に相談する。
- 通知の内容を確認する。対象の特許、規格、製品、クレームチャートの有無、回答期限、提案条件。
- 意思を書面で伝える。FRAND条件でライセンスを受ける意思と、検討に必要な資料の提供、秘密保持契約の締結を求める。
- 差止めリスクのある市場を把握する。販売している国・地域を整理する。
8-2. やってはいけないこと
- 通知を無視する、長期間返答しない
- 根拠を示さずに、「高いから払わない」とだけ拒否する
- 販売データなどの開示を、理由なく拒み続ける
- 交渉を引き延ばしながら、製品を売り続ける
- 社内で、特許の必須性や侵害の有無について、不用意なメールで見解を書く
8-3. 立場別のチェックポイント
| 立場 | 優先して確認したいこと |
|---|---|
| 完成品メーカー | 自社製品の通信機能の棚卸し、仕入先契約でのSEPの扱い、販売データの整理 |
| 部品・モジュールメーカー | 顧客のライセンスが自社部品に及ぶか、契約上の責任分担 |
| 特許権者(SEP保有者) | 宣言内容と必須性の根拠、誠実な交渉の記録、非差別的な条件 |
| 中小企業・スタートアップ | 通信モジュールの権利処理の確認、早期の専門家への相談 |
契約上の責任分担については、下記の関連記事で扱っています。

8-4. ケーススタディ(架空の例)
以下は、イメージをつかむための架空の例です。実在の企業・事案ではありません。
通信機能を持つ家電を、欧州と日本で販売するメーカーA社に、特許権者から、4Gの標準必須特許に関する通知が届きました。
- 最初の1〜2週間:通知を保管し、外部の弁護士に相談。ライセンスを受ける意思を、書面で伝えた。
- 検討:クレームチャートを確認し、仕入先との契約で、SEPが補償の対象から除外されていないかを確認した。
- 対案:提示額の算定の根拠を検討し、比較できる既存のライセンスを根拠に、具体的な対案を出した。
- データと担保:販売データを整理し、差止めのリスクが高い国では、担保の提供も検討した。
- 記録:すべてのやり取りを、日時とともに記録した。
ポイントは、早く意思を示すこと、根拠のある対案を出すこと、データを整えること、記録を残すことです。
9. よくある質問(FAQ)
Q1. FRAND宣言があれば、差止めはされないのですか?
いいえ。FRAND宣言があっても、ライセンスを受ける意思がないとみなされた実施者には、差止めが認められることがあります。結果を分けるのは、交渉の中での対応の誠実さです。
Q2. FRANDの料率は、法律で決まっていますか?
いいえ。具体的な料率や条件は、法律で決まっていません。当事者の交渉で決め、折り合わなければ、裁判所や仲裁で争われます。
Q3. 日本では、SEPの差止めは認められないのではないですか?
2014年の枠組みでは、ライセンスを受ける意思のある実施者への差止めは、権利濫用とされます。ただし、意思がないと認定されれば、差止めが認められ得ます。2025年6月の東京地裁の判決は、その例です。
Q4. 東京地裁は、世界全体のFRAND料率を決めてくれるのですか?
いいえ。審理要領は、世界全体の料率について、当事者の合意形成を促す手続です。日本の裁判所が、判決で、外国の特許を含む料率を一方的に決められるわけではないと解説されています。
Q5. 通知を受けたら、まず何をすべきですか?
通知を保管し、専門家に相談した上で、ライセンスを受ける意思を、書面で速やかに伝えることです。
Q6. 中小企業も関係ありますか?
通信機能を組み込んだ製品を販売するなら、規模にかかわらず関係します。通知が来る前に、自社製品の通信機能を棚卸しし、相談できる専門家を見つけておくことをおすすめします。
Q7. FRANDは、「安い」という意味ですか?
いいえ。FRANDは、公平な手続で、妥当な条件を提示するという約束であり、安さの保証ではありません。具体的な金額は、算定の方法、比較ライセンス、累積ロイヤルティなどに基づいて決まります(7-1を参照)。
Q8. FRAND宣言があれば、部品メーカーも、直接ライセンスを受けられますか?
世界的に、見解が分かれています。LTAを支持する立場は、FRAND宣言が、希望するすべての者へのライセンスを含むと読みます。一方、AFAの立場は、権利者が契約の相手方を選べるとします。この論点は、下記の関連記事で整理しています。

10. まとめ
- FRANDは、特許権者が標準化団体に行う「公平な条件でライセンスする」という約束です。ただし、具体的な料率や条件は、法律で決まっておらず、交渉と紛争の中心になります。
- ホールドアップとホールドアウトという、両方の悪用を抑えるために、「誠実な交渉」が重視されます。Huawei v ZTEは、その国際的な物差しです。
- 日本では、2014年の枠組みが維持されており、2025年6月の東京地裁の判決は、その適用の例です。2026年1月の審理要領は、世界全体のFRAND料率の合意形成を促す手続です。
- 筆者は、FRANDを「価格の約束」ではなく「手続の約束」と捉えます。誠実さは、記録で証明するものです。
- 勝敗を分けるのは、意思の表明、具体的な対案、データの提供、記録の保存です。
今後のウォッチポイント
- 東京地裁の審理要領とSEP調停が、実際にどう運用されるか
- 欧州議会が、欧州委員会による規則案の撤回の適否を争う訴訟の行方
- 各国の裁判所の判断の違い(暫定ライセンス、禁訴令など)
- 6Gなど、次世代規格の標準化と、新たな特許の宣言
参考資料
国際的な枠組み
日本の指針・裁判
- 経済産業省「標準必須特許のライセンスに関する誠実交渉指針」(2022年3月31日)
- 特許庁「標準必須特許のライセンス交渉に関する手引き」(初版2018年6月5日、第2版2022年6月30日)
- 2014年の知財高裁大合議判決を含む日本の議論の整理(アンダーソン・毛利・友常)
- 東京地方裁判所知的財産権部「SEPに基づく特許権侵害訴訟の審理要領」(2026年1月)
- 同・審理要領の解説(アンダーソン・毛利・友常)
- 同・解説(AIPPI)
- 同・解説(Sisvel)
- Pantech v Google(東京地裁、2025年6月23日)に関する報道
- 同・解説(Sisvel)
- 同・東京で訴えられた場合の解説(World IP Review)
- 大阪地裁による、Pixel 7aに関する請求棄却(2025年7月)
- パンテックとグーグルの和解(2025年12月)
EUのSEP規則案
本記事について
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件についての法的助言ではありません。「筆者の見解」の章は、筆者の意見です。法令、判例、各国の制度は変更されることがあります。重要な判断をする際は、必ず一次情報をご確認ください。誤りや更新が必要な点にお気づきの場合は、お問い合わせページからご連絡ください。
この記事は、大規模言語モデル(LLM)の支援を受けて作成・編集されたものです。
