【保存版】何をもってNon-Discriminatory(非差別的)とするか:SEP交渉の「公平性」を、英国・ドイツ・日本の考え方から読み解く

Non Discriminatory

標準必須特許(SEP)のライセンス交渉で、FRAND条件の「ND(Non-Discriminatory:非差別的)」は、最も解釈が分かれる言葉の一つです。「非差別的=全員に同じ価格を提示すること」と考えがちですが、各国の裁判所は、そのようには解釈していません。一方で、「何でも許される」わけでもありません。

この記事では、NDの位置づけ、英国とドイツの考え方の違い、代表的な事例、差別かどうかを判断する要素、権利者・実施者それぞれの実務を、初めての方にも分かるように、整理します。

本記事は、一般的な情報提供で、法的助言ではありません。 SEPを巡る裁判、制度、実務は、国や裁判所によって異なり、動きの速い分野です。具体的な案件は、専門家にご相談ください。

この記事でわかること

  • NDの位置づけ(標準化団体のポリシー、競争法、契約)
  • 「同一価格ではない」とされる理由
  • 英国:「一般的ND」と「厳格なND」(Unwired Planet事件)
  • ドイツ:競争法に基づく「不当な差別」(Sisvel v Haier事件)
  • ボリュームディスカウントと差別(InterDigital v Lenovo事件)
  • 比較可能なライセンスの考え方(Optis v Apple、Samsung v ZTE)
  • 権利者・実施者の実務、契約条項への示唆

用語集(先にここだけ読んでもOK)

用語意味
FRAND公正(Fair)、合理的(Reasonable)、非差別的(Non-Discriminatory)な条件でライセンスするという、特許権者の宣言
ND(非差別的)ライセンシーを、客観的な理由なく、不利に扱わないこと
厳格なND(hard-edged ND)似た状況のライセンシーには、実質的に同じ条件を与えなければならない、という考え方。最恵待遇(MFN)に近い
一般的ND(general ND)特許ポートフォリオの価値に基づく、一つのベンチマーク料率を、すべての似た状況のライセンシーに提示すればよく、他のライセンシーが、より有利な条件を得ていても、直ちに差別にはならない、という考え方
コンパラブル(比較可能なライセンス)料率を決めるときの参考にされる、過去の類似のライセンス契約
アンパック(unpacking)一括の契約(クロスライセンスなど)から、対象の特許の価値だけを、取り出して計算すること
ボリュームディスカウント販売数量に応じた割引
非FRAND要因ライセンスの条件が、交渉力の偏り(資金難、ホールドアウト、制裁など)によって、FRANDの水準からずれた要因
ホールドアウト/ホールドアップ実施者が、ライセンスの合意を引き延ばすこと/権利者が、差止めの脅威で、過大な条件を求めること

目次

1. 要点

  • NDは、「全員に同じ価格」を、求めるものではありません。英国、ドイツの最高裁レベルの判断は、この点で、共通しています。
  • ただし、アプローチは、異なります。英国は、ベンチマーク料率を軸にした「一般的ND」。ドイツは、競争法の枠組みで、客観的な正当化の理由を、問います。
  • 大幅なボリュームディスカウントは、規模の小さいライセンシーへの差別と判断される可能性があります(InterDigital v Lenovo、高等法院、2023年)。
  • 比較可能なライセンスを使う場合、何が「同様の状況」か(ポートフォリオ、規模、時期、非FRAND要因)が、争点になります。
  • 実務では、客観的な根拠の記録と、比較可能なライセンスの情報の扱い(秘密保持)が、大切です。

2. NDの位置づけ

枠組み内容
標準化団体のポリシーETSIなどの知的財産権(IPR)ポリシーは、特許権者に、FRAND条件でライセンスする意思の宣言を求める。一般に、NDは、FRANDの3つの要素の一つ(ETSIのポリシーは、一般に、フランス法に基づくとされる)
EU競争法EU機能条約第102条は、優越的地位の濫用を禁じ、その例として、同等の取引に、異なる条件を適用し、競争上の不利益を与えることを挙げる。ドイツの裁判所は、この枠組みで、NDを検討する
契約・裁判所のFRAND判断英国の裁判所は、ETSIの宣言を、契約の一種として、FRAND条件を、判断する
日本経済産業省の誠実交渉指針、特許庁の手引きは、交渉の手順と、客観的な根拠の提示に関する文書。NDを、単独で、争点とした確立した裁判例は、筆者の確認の範囲では、見つかっていません

3. 「同一価格」ではない:共通の考え方

実務上、ライセンスの条件は、次のような客観的で合理的な差異によって、変わり得ます。

  • 取引量、契約の時期、実施する地域、製品の範囲
  • クロスライセンスの有無
  • 市場や技術の変化
  • ライセンシーが、交渉や支払いを、どう行ったか

ただし、どの差異が、どこまで認められるかは、国や事案によって、異なります。次章から、具体的に見ていきます。


4. 英国:「一般的ND」と「厳格なND」(Unwired Planet v Huawei)

4-1. 事案

項目内容
当事者Unwired Planet(特許のライセンスを行う会社)とHuaweiなど
背景Unwired Planetは、最終のトライアルの前に、Samsung(とGoogle)と和解し、Samsungは、値引きされた価格で、グローバルなライセンスを受けた。当時、Unwired Planetは、資金繰りが厳しい状況だったと、解説されている
Huaweiの主張「Samsungと同じ(より低い)料率を、自社にも適用すべき」(厳格なND)
裁判所高等法院(2017年)、控訴院(2018年)、最高裁(2020年、[2020] UKSC 37)

4-2. 判断のポイント

論点内容
NDの性質「一般的ND」。「公正、合理的、非差別的」は、一つの複合的な義務とされた
内容権利者は、似た状況のすべてのライセンシーに、**ポートフォリオの市場価値に基づく料率(ベンチマーク)**を提示すべき。ベンチマークより低い料率で契約するかは、権利者の自由
結論他のライセンシー(Samsung)が、別の時期に、より低い料率を得ていても、Huaweiが、公正かつ合理的な料率で、提示を受けているなら、直ちに差別にはならない
控訴院の補足SamsungとHuaweiのライセンスは、比較可能な取引。権利者の財務状況や、主観的な理由は、取引自体の特徴には当たらず、比較可能性を判断する要素ではないとされた
理由づけ「厳格なND」を課さなくても、ホールドアップ(過大な要求)は、ベンチマーク料率で、防げる。料率が低いことを、実施者が、不利益に感じる理由はない(効果に着目した考え方)

「最恵待遇(MFN)は保証されない」という整理が、よく紹介されますが、英国最高裁が、この言葉を使ったかは別として、厳格なNDが否定された点が、重要です。


5. ドイツ:競争法に基づく「不当な差別」(Sisvel v Haier)

項目内容
当事者Sisvel(特許のライセンスを行う会社)とHaier
争点Sisvelは、Hisenseに対して割引を与えたが、Haierには、より高い条件を提示した。これが差別かどうか
デュッセルドルフ高等裁判所(2017年3月30日)Sisvelが、客観的な理由なく、Haierを不平等に扱ったとして、差別と判断。優越的地位の濫用を認めた
連邦通常裁判所(BGH、2020年5月5日、KZR 36/17)原判決を破棄。「ND」は、すべてのライセンシーに、同一の条件を提供することを、求めない(画一的な料金表(uniform tariff)は、不要)
立証責任の整理(解説)権利者が、条件を説明し、差別に見える点の客観的な理由を、示す。実施者は、不当な競争上の不利益があることを、示す
競争法の観点判断は、関連市場で、競争上の不利益が生じているかに、焦点を当てる
本件の評価(解説)Hisenseへの条件は、中国政府からの圧力によるもので、比較の基準にならない、と評価された
情報提供(報道)BGHの口頭弁論では、権利者が、既存のライセンスの情報や、実施者を別に扱う理由を提供することが、期待される、と報じられた

英国との比較:結論として「同一価格は、不要」という点は、共通です。ただし、ドイツは、競争法の枠組みで、客観的な正当化の理由と、立証責任の分担を整理しており、英国の「ベンチマーク料率」を軸にした整理とは、アプローチが異なります。


6. ボリュームディスカウントと差別(InterDigital v Lenovo)

6-1. 高等法院(2023年3月16日、[2023] EWHC 539 (Pat))

論点内容
争点InterDigitalが、大口のライセンシーに与えた大幅な割引を前提に、**Lenovoにも高い料率(プログラム料率)**を求めたことが、FRANDか
判断(解説)大幅なボリュームディスカウントは、規模の小さいライセンシーに対する差別になり、FRANDとは言えない。プログラム料率は、現実的なFRAND料率の指標ではない
料率一括金額 1億3,870万ドル(1台あたり約0.175ドル。2007年〜2023年の販売分)+利息
方法比較可能なライセンスの分析を主、トップダウンの検証は、採用せず

6-2. 控訴院(2024年7月12日、[2024] EWCA Civ 743)

論点内容
結果1台あたり約0.225ドルに引き上げ(一括金額は、約1億7,830万ドル+利息)。InterDigitalは、過去の販売分も含め、総額約2億4,010万ドルと、開示
理由比較対象の一つ(LG 2017)が、ホールドアウトという非FRAND要因の影響を受けていた。上方に調整すべき(0.30ドル×調整係数0.75=0.225ドル)
その他消滅時効は、FRANDの判断には、関係しない。Lenovoの控訴は、棄却

注意:控訴院による料率の引き上げは、非FRAND要因の調整によるもので、NDの判断枠組みを、改めて示したものとは、整理できません。

6-3. その後

InterDigitalとLenovoは、2024年10月に、すべての係争を終結させ、ICC(国際商業会議所)の拘束力のある仲裁で、新しいライセンスの条件を、決めることで合意しました。仲裁は、2024年11月に申し立てられ、2025年3月に仲裁廷が確認されました(InterDigitalの開示)。結果は、確認できていません。


7. 比較可能なライセンスと「同様の状況」

近年の英国の判断は、比較可能なライセンス(コンパラブル)を、料率を決める中心的な方法としています。このとき、何が「同様の状況」かが、NDの観点でも、重要になります。

事案ポイント
Optis v Apple(控訴院、2025年5月1日、[2025] EWCA Civ 552)高等法院の「複数のライセンスを平均する」手法を、否定。最も信頼できる比較対象を選び、アンパックして、1台あたり約0.15ドル(Appleの支払いは、約5億200万ドル)と判断。解説では、多くの他社が、確立した比較可能な料率で受け入れているのに、有利な条件を求める側は、NDとの整合性を含めて、説明する必要があると、指摘されている。英国最高裁の審理は、2026年6〜7月。判決は、確認できていません
Samsung v ZTE(高等法院、2026年5月1日、[2026] EWHC 999 (Pat))英国で初のクロスライセンスのFRAND判断。ZTEのAppleとSamsungとのライセンスを、最も適切な比較対象としつつ、米国の制裁による交渉力の低下などの非FRAND要因を調整。他のライセンサー(ENI)の契約は、ポートフォリオが大きく異なるとして、採用せず。一括金額 3億9,200万ドル(JUVE Patentの報道)
同じ紛争の他国の判断(報道)中国(重慶)は、ZTEの6年間で7億3,100万ドルの提案を、FRANDと判断。ミュンヘン地方裁判所は、ZTEの差止めを認め、5年間で約6億4,000万ドルの和解を提案。英国と他国で、結論が大きく異なる

NDへの示唆:「似た状況」かどうかは、ポートフォリオの違い、規模、時期、交渉力の偏り(非FRAND要因)によって、変わります。どの裁判所で判断されるかによって、比較の仕方も、結論も、異なり得ます。


8. 国・地域の考え方の比較

項目英国ドイツ日本
位置づけETSIの宣言に基づくFRAND条件の一部。裁判所が、グローバルなFRAND条件を判断できる(Unwired Planet、2020年)競争法(優越的地位の濫用、EU機能条約第102条)の枠組み経済産業省の誠実交渉指針(2022年)、特許庁の手引き(初版2018年、改訂版2022年)。法的拘束力はなし
「同一価格」の要否不要(一般的ND)不要(画一的な料金表は、不要)確立した裁判例は、筆者の確認の範囲では、未確認
中心の考え方ベンチマーク料率(ポートフォリオの価値)。比較可能なライセンス客観的な正当化の理由。競争上の不利益があるか客観的な根拠の提示(第三者のライセンスの情報、プールの料率など)による交渉
立証裁判所が、証拠に基づき、料率を判断権利者が、条件を説明し、客観的な理由を示す。実施者が、不当な競争上の不利益を、示す指針は、権利者が、客観的な根拠を示すことを、期待
情報開示裁判所が、証拠開示を通じて、比較可能なライセンスを確認権利者が、既存のライセンスの情報を提供することが、期待される(報道)指針は、第三者のライセンスの情報などを、客観的な根拠として示すことを、例示(解説による)

9. 何が「差別的」と評価され得るか:判断要素

以下は、判例や実務の考え方を踏まえた、一般的な整理です。個別の事案は、事実関係によります。

判断要素考え方
「同様の状況」取引の特徴(ポートフォリオ、販売規模、対象製品、地域、時期)で判断。権利者の財務状況や、主観的な理由は、比較可能性を判断する要素とは、されない(英国控訴院)
ボリュームディスカウント大幅な割引が、規模の小さいライセンシーに、不利益を与える場合は、差別と判断され得る(高等法院)。割合の確立した基準は、ない
客観的な割引の理由管理コストの削減、早期契約のインセンティブなど、経済的に説明できる理由が、必要になり得る(ドイツのBGHは、客観的な理由の提示を、権利者に求める方向)
クロスライセンス実施者が、価値のある特許を提供する場合、その価値を、対価と相殺することは、条件の差を説明する理由になり得る。特許の価値の評価が、争点になる
時期の違い別の時期の契約の条件との差は、直ちに差別とはならない(英国)。ただし、技術の普及や、代替技術の登場など、市場の変化で説明できるかが、焦点
非FRAND要因過去の契約が、ホールドアウトや制裁などの影響を受けていた場合は、調整して、比較に使う(InterDigital v Lenovo、Samsung v ZTE)。非FRAND要因が、あるからといって、比較対象から、外れるわけではない
特別な事情例えば、政府の圧力による契約は、比較の基準にならない場合がある(ドイツの事案の解説)
特許プールプールは、画一的な条件(車両あたりの定額など)で、提供する例が多い。早期契約の割引(Avanciの5Gで、1台あたり32ドル、早期は29ドルと、2023年に報じられた。現在は、変わっている可能性)など、条件の差を設ける例もある。これらが、NDの観点で、どう評価されるかは、個別に検討が必要

10. 実務の考え方

10-1. 権利者の側から

確認項目内容
条件の差の理由条件の差(割引、時期、クロスライセンス)の客観的な理由を、記録する。後の紛争で、説明できるように
ライセンスのプログラム標準の条件(プログラム)を、設け、例外の基準(数量、早期契約など)を、明確にする
情報の提供実施者に、比較可能なライセンスの情報(秘密保持の下で)を、示せるように、準備する
事案の整理大口の割引が、後続の交渉の基準として、不利にならないか、社内で整理する
国ごとの違い英国、ドイツなど、どの裁判所で、争われる可能性があるかを、考慮する

10-2. 実施者の側から

確認項目内容
比較の材料権利者の過去のライセンスについて、公表された情報(決算の資料、訴訟の資料、仲裁の公表、プールの料率など)から、市場の水準を、確認する
情報の請求権利者に、比較可能なライセンスの情報(秘密保持の下で)を、書面で請求し、その経緯を記録する
主張の組み立て大幅な割引が、規模の差だけでは、説明できない場合に、差別を主張する余地がある。ただし、他の要因(クロスライセンス、時期、非FRAND要因)を、権利者が、主張する可能性を、考慮する
誠実な交渉NDを、争う場合も、FRAND条件でライセンスを受ける意思を、一貫して示す(日本の経済産業省の指針、英国・ドイツの判断で、いずれも実施者の態度が重視される)
国ごとの違いどの国の裁判所を、使うかで、NDの扱いが異なり得る

10-3. 契約条項への示唆

条項内容
最恵待遇(MFN)条項ライセンス契約に、「他のライセンシーに、より有利な条件を与えた場合は、同様に適用する」という条項を、契約で、定める方法がある。NDの判断とは別に、契約上の権利として、交渉できる。範囲(対象の条件、期間、比較の対象)を、明確にする
見直し条項契約の期間中に、比較可能なライセンスの条件の変化があった場合の、条件の見直し(再交渉)を、定める
開示条項第三者のライセンスの条件の、秘密保持の下での開示の範囲を、定める
紛争解決ライセンス条件を、仲裁で決める場合(InterDigitalの例)、FRANDの基準(NDの扱いを含む)を、付託の合意で、明確にする

11. ケーススタディ(架空の例)

以下は、イメージをつかむための架空の例です。実在の企業・案件ではありません。

SEPの権利者A社は、実施者B社に、ライセンスの条件を提示しました。B社は、A社が、大手のC社に、大幅な割引を与えたと聞き、「自社に提示された条件は、差別的だ」と考えました。

  • B社の対応:A社に、比較可能なライセンスの情報(秘密保持の下で)を、書面で請求し、FRAND条件でライセンスを受ける意思を、一貫して示しました。また、公表された情報(C社の決算の資料など)から、市場の水準を、整理しました。
  • A社の対応:割引の理由として、数量、クロスライセンスの対価、早期の契約を、客観的な根拠とともに、説明しました。
  • 結果:両社は、割引の理由の一部(クロスライセンスの価値)は、認めつつ、数量割引の幅を、縮小する条件で、合意しました。

ポイントは、**「客観的な根拠の提示」「情報の請求の記録」「意思の維持」**です。どの裁判所で争われるかによって、評価の仕方が異なり得る点にも、注意が必要です。


12. 実務のチェックリスト

確認項目内容
NDの前提「同一価格」は、求められないが、客観的な理由が、必要になり得ることを、理解しているか
国ごとの違い英国(一般的ND、ベンチマーク)、ドイツ(競争法、客観的な正当化)のアプローチの違いを、把握しているか
「同様の状況」ポートフォリオ、規模、時期、非FRAND要因を、整理しているか
割引の理由割引、クロスライセンス、時期の差の客観的な理由を、記録しているか
比較の材料公表された情報(決算、訴訟、仲裁、プール)を、確認したか
情報の請求・開示比較可能なライセンスの情報の請求・開示の手順と、秘密保持を、整えたか
誠実な交渉FRAND条件でライセンスを受ける意思を、一貫して示しているか(実施者)
契約条項MFN条項、見直し条項、開示条項を、検討したか
専門家弁護士・弁理士に、早期に相談しているか

13. よくある質問(FAQ)

Q1. 「非差別的」とは、全員に同じ料率を提示することですか?
いいえ。英国最高裁も、ドイツのBGHも、全員に同一の条件を、求めるものではないとしています。ただし、客観的な理由のない不当な差別は、問題になり得ます。

Q2. 他社が、自社より低い料率で契約していたら、差別ですか?
直ちに差別とは、なりません。英国では、一般的NDの考え方により、自社にベンチマーク料率が提示されているなら、他社が別の時期に低い料率を得ていても、差別とは、されません。ドイツでは、客観的な正当化の理由の有無が、検討されます。

Q3. 大口の割引は、認められますか?
割引そのものが、否定されるわけではありませんが、大幅な割引が、規模の小さいライセンシーに、不利益を与える場合は、差別と判断される可能性があります(InterDigital v Lenovo、高等法院)。割合の確立した基準は、ありません。

Q4. 英国とドイツで、NDの考え方は、同じですか?
結論(同一価格は、不要)は、共通ですが、アプローチは、異なります。英国は、ベンチマーク料率を軸にし、ドイツは、競争法の枠組みで、客観的な正当化の理由と立証責任を、整理しています。

Q5. 日本では、NDは、どう扱われますか?
経済産業省の誠実交渉指針、特許庁の手引きは、交渉の手順と、客観的な根拠の提示を、示しています。NDを、単独で、争点とした確立した裁判例は、筆者の確認の範囲では、見つかっていません。

Q6. 比較可能なライセンスの情報は、どう入手しますか?
公表された情報(決算の資料、訴訟・仲裁の公表、プールの料率)や、秘密保持の下での、権利者からの開示が、考えられます。訴訟になれば、裁判所が、証拠開示を通じて、確認します。

Q7. 契約で、最恵待遇を、求められますか?
契約の条項として、交渉できます。ただし、NDの判断とは、別の、契約上の権利です。対象の条件、期間、比較の対象を、明確にします。

Q8. 特許プールの条件は、差別になりませんか?
プールは、画一的な条件を、提供する例が多く、早期契約の割引などを設ける例もあります。これらが、NDの観点で、どう評価されるかは、個別の検討が必要です。英国最高裁(2026年7月)は、プールのライセンスについても、英国の裁判所に、FRAND条件を判断する管轄があると、判断しました(FRAND条件そのものは、今後の審理)。


14. まとめ

  • NDは、「全員に同じ価格」では、ありません。英国(一般的ND)も、ドイツ(競争法の枠組み)も、同一の条件を、求めない点では、共通です。
  • ただし、アプローチは、異なり、英国は、ベンチマーク料率、ドイツは、客観的な正当化の理由と立証責任を、軸にしています。
  • 大幅なボリュームディスカウントは、差別と判断され得ます(InterDigital v Lenovo、高等法院)。ただし、控訴院の料率の引き上げは、非FRAND要因の調整によるものです。
  • 比較可能なライセンスの分析では、「同様の状況」(ポートフォリオ、規模、時期、非FRAND要因)が、争点になります(Optis v Apple、Samsung v ZTE)。
  • 実務では、客観的な根拠の記録、比較可能なライセンスの情報の扱い、国ごとの違いの理解、契約条項(MFN、見直し、開示)が、大切です。

今後のウォッチポイント

  • Optis v Appleの、英国最高裁の判断(審理は、2026年6〜7月)
  • Samsung v ZTEの、控訴や、他国の判断との関係
  • InterDigital・Lenovoの、仲裁の結果と公表
  • ドイツ、UPCでの、NDに関する判断
  • 特許プールのライセンスの、FRAND(NDを含む)に関する、英国の審理(Tesla v. InterDigital・Avanci)
  • 日本での、NDを争点とする裁判例の登場

参考資料

英国:Unwired Planet v Huawei

ドイツ:Sisvel v Haier

英国:InterDigital v Lenovo

英国:Optis v Apple、Samsung v ZTE

日本の政策文書

特許プール

本記事について
本記事は、一般的な情報提供であり、特定の案件についての法的助言ではありません。裁判例の評価は、解説に基づく部分があります。裁判例、制度、実務は変更されることがあります。重要な判断をする際は、必ず一次情報と、専門家の助言をご確認ください。誤りや更新が必要な点にお気づきの場合は、(連絡先・問い合わせ方法)までご連絡ください。

この記事は、大規模言語モデル(LLM)の支援を受けて作成・編集されたものです。他の言語版は、LLMによる翻訳です。翻訳の過程で、ニュアンスや法律用語に不正確な点が生じる可能性がありますので、重要な判断をされる際は、日本語の原文と一次情報をご確認ください。

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