音楽サブスクリプションの普及や動画配信、SNSでの楽曲利用が日常化する中、日本の音楽著作権管理の2大組織であるJASRAC(日本音楽著作権協会)とNexTone(ネクストーン)の動向に大きな変化が起きています。

特に2025年から2026年にかけては、デジタル領域のさらなる拡大や利用実態の変化に伴い、使用料規程の改定、分配額の過去最高更新、海外管理体制のアップデートなど、クリエイターや音楽出版社、そして音楽利用者にとっても見逃せない重要なニュースが続いています。
今回は、両団体の最新ニュースと仕組みの変更点を分かりやすく解説します。
1. JASRAC(日本音楽著作権協会)の最新動向・仕組み変更
日本の音楽著作権管理で約9割のシェアを誇るJASRACでは、デジタル配信の好調とライブエンタメの復活を背景とした大規模な動きが見られます。

① 2025年度の分配額が過去最高(1,518億円)を更新
2026年3月発表の通期(2026年3月分配期まで)における権利者への分配実績が1,518億円に達し、過去最高を記録しました。
主な要因は以下の2点です。
- インタラクティブ配信の圧倒的シェア:音楽サブスクや動画配信を含むデジタル配信分野が約594億円と、全体の最大シェアを占め続けています。
- 生演奏・エンタメの完全復活:コロナ禍以降、ライブやフェス、大規模な演奏会が完全に復活したことで、「大規模演奏会等」の区分における分配額が大きく伸長しました。
② 管理手数料実施料率の一部引き下げ(2026年3月分配期)
JASRACが徴収した使用料から控除する「管理手数料」について、2026年3月分配期に限り、大規模演奏会等や授業目的公衆送信補償金などの実施料率を引き下げる臨時措置が取られました。これにより、クリエイターや音楽出版社への実質的な還元額が一時的に増加しています。
③ 「業務用音楽配信」に関する使用料規程の新設(2025年5月1日実施)
飲食店や美容室などの店舗向けに音楽をBGMとして配信するサービスの利用実態に合わせ、新しく「業務用音楽配信」としての使用料規程が新設・実施され、店舗ビジネスにおける音楽利用の窓口がより明確化されました。
④ 各種使用料規程の改定(2026年4月1日実施)
時代の変化やメディアの利用状況に合わせ、2026年4月より規程の改定が行われています。
- 有線テレビジョン放送等:使用料率が従来の1.0%から1.5%へ変更されました。
- 歌唱教室における演奏等:従来の「歌謡教室」という名称が「歌唱教室」に修正され、受講者数単位で計算する規定が新設されました。
2. NexTone(ネクストーン)の最新動向・仕組み変更
「一強一挑戦者」の構造において、民間企業としての機動力と柔軟性を武器にシェアを伸ばすNexToneでも、グローバル展開や移管に関する大きな動きが話題となっています。

① デジタル領域の強みを背景とした業績の急成長
NexToneはデジタル配信(インタラクティブ配信)やYouTubeにおける「Content ID」を活用した収益化支援、デジタルディストリビューション事業(配信代行)の強みを活かし、急速に業績を拡大しています。
直近の決算でも売上高が100億円を突破し、営業利益が前年同期比で50%以上増加するなど、市場における存在感を高めています。
② 海外地域(外国入金)の管理体制アップデート
海外での著作権区分は、国内の13区分とは異なり、主に「演奏権」と「録音権」の2区分で管理されます。NexToneでは海外管理の精度向上のため、複数のルートを組み合わせた独自のアップデートを行っています(2026年5月には中国・韓国地域の管理体制もアップデートが発表されました)。
- SACEM・SDRM経由の全世界管理:世界最古のフランスの管理団体を介してグローバルに網羅
- IMPELとの提携:グローバル配信サービス(Spotify、Apple Music等)から直接、高いレートで使用料を効率的に回収
- YouTubeの全世界直接管理:海外団体を中抜きし、NexToneが直接全世界分のContent IDを管理するため、海外分の収益であっても国内と同じスピードでの分配が可能
③ 他社からの大規模な管理移管(2026年4月1日実施)
音楽出版社などの権利者が著作権の管理範囲(委託先)を見直したことにより、2026年4月1日付でJASRAC等の他社からNexToneへ新しく管理が移管された作品が多数発生しました。
NexToneへの委託範囲の変更手続きは3ヶ月に1度可能ですが、JASRACなどの他社からの変更は原則「1年に1度(12月末日までの手続きで翌年4月1日適用)」となるため、毎年この時期には業界内で大きな作品移管が注目を集めます。
3. 【比較表】JASRACとNexToneの構造・手数料の違い
権利者が楽曲を預ける際、または利用者が申請する際、どちらの団体がどのような特徴を持っているのかを以下の表にまとめました。
| 比較項目 | JASRAC(日本音楽著作権協会) | NexTone(ネクストーン) |
| 契約形態 | 信託契約(著作権そのものがJASRACに移転) | 委任契約/取次(著作権は元の権利者に留まる) |
| 主な契約対象 | 個人クリエイター(作詞・作曲家)および法人 | 原則として法人(音楽出版社)。※一部個人向け代理提携あり |
| 強み・特徴 | 85年以上の実績、一般演奏権(ライブ・店舗)の圧倒的な網羅性 | デジタル・YouTube領域の柔軟性、データの透明性とスピード |
| インタラクティブ配信手数料 | 10.0% | 7.0%(戦略的に低く設定) |
| 地上波放送手数料 | 5.0% | 4.0% |
| 通信カラオケ手数料 | 10.0% | 8.0% |
| オーディオ録音(CD等)手数料 | 6.0% | 4.0% |
| 収支差額金の還元 | あり(非営利団体のため、余剰金を翌年委託者へ還元) | なし(営利企業のため、株主配当等へ回る) |
4. まとめ:これからの音楽著作権とクリエイターの選択
現在の音楽著作権業界は、「デジタル配信における効率的な回収とグローバルデータ管理」が最大の争点となっています。
伝統的なメディアや生演奏の現場、そして非営利ならではの「収支差額金還元」で確固たる基盤を示すJASRAC。一方で、低めの手数料率やプロモーション時の柔軟性(タイアップ時の使用料免除対応など)、YouTube全世界直接管理のスピード感を武器にシェア50%のロードマップを描くNexTone。
クリエイターや音楽出版社は、自身の楽曲が「どこで」「どのように」聴かれるかによって、最適な権利のポートフォリオを主体的に選択・カスタムしていく時代を求められています。

📚 参照情報リスト
本記事は、各団体の公式公開情報および業界メディアのデータに基づき構成されています。
- JASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会) 公式サイト
- 分配ルールの基本: https://www.jasrac.or.jp/creators/rule/
- 使用料が作詞者、作曲者、音楽出版社に届くまで(国内): https://www.jasrac.or.jp/creators/flow/
- 株式会社NexTone 公式サイト
- 著作物使用料分配規程・コーポレート: https://www.nex-tone.co.jp/
- NexTone 公式note(委託範囲・海外管理解説): https://note.com/nextone
- 一般社団法人音楽制作者連盟「音楽主義」
- 『音楽著作権』バイブル 第15回 JASRACとNexToneの使用料規程と管理手数料: https://www.ongakusyugi.net/1216/
