「1再生で、いくら入るのか」。ストリーミングが主流になった今、クリエイターの間でよく聞かれる疑問です。この記事では、日本の音楽著作権の管理事業者であるJASRACとNexToneに焦点をあてて、使用料が決まる仕組み、管理手数料、作詞家・作曲家・音楽出版社への分配の流れを、仮定つきの計算例も交えて、初心者の方向けに整理します。
配信サービス側の分配方式(プロラタ、ユーザーセントリックなど)は、下記関連記事をご覧ください。

2社の違いは、下記で扱っています。

本記事は一般的な情報提供で、法的・財務的な助言ではありません。 管理手数料や分配のルールは、変更されます。具体的な契約や収入は、各管理事業者や、出版社の最新の情報でご確認ください。
この記事でわかること
- 使用料の額が、どのように決まるのか
- 管理手数料(実施料率)の仕組みと、確認できた数字
- JASRACの「収支差額金」とは何か
- 作詞家・作曲家・音楽出版社の分配の考え方
- 仮定を置いた、1再生あたりの計算例
- 収入を支える、実務上のポイント
用語集(先にここだけ読んでもOK)
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 使用料規程 | 管理事業者が定める、使用料の額や計算方法の規則 |
| 管理手数料(実施料率) | 管理事業者が、徴収した使用料から、運営費用として差し引く割合 |
| 分配 | 管理手数料を引いた後の使用料を、権利者に支払うこと |
| 作品届 | 管理を委託する作品と、権利者の分配の割合などを、管理事業者に届け出る手続き |
| 収支差額金 | JASRACで、収益が費用を上回った場合の差額。翌年度に、権利者へ分配される |
| 音楽出版社 | 作詞家・作曲家から、著作権を預かり(または管理を任され)、楽曲の利用開発や管理を行う会社 |
| 信託/委任 | JASRACは信託契約(著作権を移転)、NexToneは委任契約(著作権は移転しない) |
1. 使用料は、どう決まるのか
1-1. 使用料規程
音楽の利用者が支払う使用料の額は、管理事業者が定める使用料規程に基づいて決まります。著作権等管理事業法により、管理事業者は、使用料規程を文化庁長官に届け出て、概要を公表する義務があります。また、使用料の水準への影響力が大きい事業者には、利用者の代表から協議を求められたときに応じる義務があり、協議が成立しない場合は、文化庁長官が裁定する仕組みもあります。
つまり、使用料は、管理事業者が一方的に決めるものではなく、届出、公表、協議などの手続きを経て決まります。
1-2. 市場の大きさ(確認できた数字)
| 事業者 | 公表されている数字 | 注意点 |
|---|---|---|
| JASRAC | 2025年度の使用料の徴収額は、約1,523億円、分配額は、約1,518億円(いずれも過去最高、2026年5月の発表) | 国内外の利用の合計。インタラクティブ配信(サブスク、動画配信など)が、成長を牽引 |
| NexTone | 2026年3月期の取扱高は、約403億円、売上高は、約208億円(同社の決算資料) | 著作権管理以外の事業(配信など)を含む集計。JASRACの徴収額と、単純には比較できない |
JASRACの徴収額のうち、インタラクティブ配信は、2021年度に約374.5億円で、全体の約3分の1を占めました(その後も、増加傾向と報じられています)。
2. 管理手数料と、分配の仕組み
2-1. 管理手数料とは
管理事業者は、利用者から徴収した使用料から、運営のための管理手数料を差し引き、残りを権利者に分配します。手数料の率(実施料率)は、使用料の区分ごとに、異なります。
2-2. JASRACの管理手数料:確認できた数字
| 区分 | 実施料率の例 | 出典・時期 |
|---|---|---|
| 放送等 | 8.5% | 2020年6月分配期以降(9%から引き下げ) |
| 有線放送等 | 9.5% | 同上(10%から引き下げ) |
| インタラクティブ配信(サブスク、動画配信など) | 9.5% | 同上(10%から引き下げ) |
| 演奏等のうち、大規模演奏会等 | 通常15% | 2021年の報道 |
| CDなどの録音(蓄音機用音盤など) | 6% | 2018年の解説 |
※これらは、報道や解説で確認できた数字で、現在の率とは異なる場合があります。必ず、JASRACの最新の使用料規程や、管理手数料実施料率の公表で確認してください。
また、JASRACは、決算の見通しによって、特定の分配期に限り、一部の区分の率を引き下げています(たとえば、2024年3月分配期、2026年3月分配期)。
2-3. JASRACの「収支差額金」
JASRACは、非営利の一般社団法人で、剰余金を内部に留保せず、収益が費用を上回った場合の差額(収支差額金)を、翌年度に権利者へ分配する仕組みを取っています。決算の前でも、収支差額金になることが確実な部分は、できるだけ早く還元するため、特定の分配期に限って、手数料率を下げる運用が行われています。
2-3. NexToneの管理手数料
NexToneは、分配のときに、分配額に、利用区分ごとの管理手数料率を掛けた額を、管理手数料としていると、FAQで説明しています。率は、約款・規定等の「管理手数料実施料率」で確認できます。
| 項目 | NexToneの案内 |
|---|---|
| 契約の申込み・年会費 | 不要 |
| 分配日 | 年4回(3月、6月、9月、12月の15日) |
| 最低支払額 | 3,000円に達しない場合は、分配されない |
| 分配明細 | PlayNからダウンロード。利用者名、サービス名、数量、使用料などが分かる明細を提供すると、同社は説明している |
どちらの事業者の手数料が低いか、高いかは、区分ごとに異なります。比較するときは、自分の楽曲が、どの区分で多く使われるのかを踏まえて、最新の規程で確認してください。
3. 使用料が、作詞家・作曲家に届くまで
3-1. 流れ
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1 | 配信サービス等の利用者が、管理事業者に、使用料を支払う(使用料規程に基づく) |
| 2 | 管理事業者が、管理手数料を差し引く |
| 3 | 作品届に記載された分配の割合に基づき、権利者(音楽出版社、作詞家、作曲家)に分配する |
| 4 | 音楽出版社が、出版契約に基づき、作詞家・作曲家に、再分配する場合がある |
JASRACのQ&Aには、録音権の使用料は、音楽出版社を経由して送金されるケースが一般的である、という説明があります。
3-2. 録音側の収益は、別のルート
ストリーミングでは、収益が大きく二つに分かれます。
| ルート | 内容 | 受け取る人 |
|---|---|---|
| 楽曲(著作権)側 | 歌詞とメロディに対する使用料。JASRACやNexToneを経由 | 作詞家、作曲家、音楽出版社 |
| 録音(原盤)側 | 音源に対する収益。レコード会社やディストリビューターを経由 | レコード会社、実演家(歌手、演奏家)など |
この記事で扱う管理事業者の分配は、前者(楽曲側)についてです。
4. 分配の割合(作詞家、作曲家、音楽出版社)
4-1. 基本の考え方
「出版社50%、作詞家25%、作曲家25%」が、よく紹介される例です。しかし、これはあくまで一つの例で、固定の「標準」ではありません。
- 国際的な管理団体の組織(CISAC)の標準的な契約では、音楽出版者の取り分の合計は、2分の1を超えてはならないとされています。
- 逆に言えば、作詞者・作曲者の取り分は、少なくとも5割とされます(JASRACの信託契約者の場合の説明)。
- 実際の割合は、作品届に記載された割合と、出版契約で決まります。
4-2. 音楽出版社の役割
音楽出版社は、楽曲の利用開発(タイアップの獲得など)や、国内外の権利管理の代行を行います。その対価として、使用料の一部を受け取ります。出版社が付く場合と、付かない場合(作家自身が管理事業者に、直接、信託や委任をする場合)では、受け取れる割合や、事務の手間が、異なります。
5. 計算例:仮定を置いて、考えてみる
以下は、数字を、すべて仮定として置いた計算例です。実際の金額とは、異なります。
5-1. 1再生あたりの計算例(仮定)
| 項目 | 仮定 | 計算 |
|---|---|---|
| 1再生あたりのサービスの総収益 | 1円(仮定) | 1円 |
| 楽曲(著作権)側の使用料の割合 | 8%(仮定) | 0.08円 |
| 管理手数料(インタラクティブ配信の実施料率の例) | 9.5% | 0.08円 × (1 − 0.095) = 約0.0724円 |
| 分配(作品届の例:出版社50%、作詞25%、作曲25%) | 例 | 出版社 約0.0362円、作詞 約0.0181円、作曲 約0.0181円 |
※「楽曲側の使用料の割合」は、サービスや契約、国によって異なります。ここでは、説明のための仮の数字です。
5-2. 月収20万円を、使用料だけで得るには(仮定)
上の計算例で、作詞と作曲を、同じ人が行い、出版社が付く場合、その人の取り分は、1再生あたり、約0.0362円です。月20万円を得るには、次の再生数が必要になります。
- 200,000円 ÷ 0.0362円 ≒ 約550万回(毎月)
作詞のみ、または作曲のみの場合(約0.0181円)は、約1,100万回です。この数字は、仮定によって、大きく変わります。ストリーミングの楽曲側の使用料だけで、生活を支えるには、多くの再生数が必要になる、というイメージをつかむための例です。
6. 収入の考え方:ストリーミング以外も組み合わせる
| 収入源 | 内容 |
|---|---|
| ライブ・コンサート | 演奏等の使用料。区分や、規模によって、手数料率が異なる(大規模演奏会等は、報道で15%とされた) |
| 直接の収入 | グッズ、ファンクラブ、有料コンテンツなど、管理事業者を介さない収入 |
| 海外の使用料 | 海外の管理団体との提携で、徴収される。NexToneは、2021年に、フランスのSACEM、SDRM、IMPELなどと、徴収の代行契約を結んでいる。JASRACも、2025年度の外国からの徴収額のランキングを公表している(アニメ関連の楽曲が上位) |
| 他の利用 | 放送、動画配信、ゲームなど、利用形態ごとの使用料 |
7. 実務のチェックリスト
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品届 | 管理事業者に、作品届を出しているか。分配の割合は、正しいか(NexToneは、作品届が出るまで、作品を管理しない) |
| 分配率 | 作詞、作曲、出版社の割合を、書面で確認しているか |
| 管理手数料 | 自分の楽曲が、多く使われる区分の、手数料率を確認しているか |
| 明細 | 管理事業者や、出版社の明細を、定期的に確認しているか |
| 出版契約 | 契約の期間、再分配の条件、解約の条件 |
| 管理範囲 | どの権利を、どの事業者に預けているか(併用する場合の手続きも確認) |
| 最低支払額・分配日 | 各事業者の条件 |
8. ケーススタディ(架空の例)
以下は、イメージをつかむための架空の例です。実在の人物・事案ではありません。
シンガーソングライターのAさんは、自分で作詞・作曲した楽曲を、音楽出版社と契約して、JASRACに管理してもらっています。
- 確認:明細を見ると、インタラクティブ配信の使用料から、管理手数料が引かれ、残りが出版社に分配され、そこからAさんに再分配されていた。
- 疑問:思ったより少ないと感じたので、出版契約の分配率と、作品届の内容を確認した。
- 整理:1曲ごとの、再分配の割合が、契約と合っていることを確認できた。
- 対応:配信以外の収入源(ライブ、ファンクラブ)も、増やすことを検討した。
ポイントは、「分配の流れを理解する」「作品届と出版契約を確認する」「明細を定期的に見る」「収入源を分散する」 ことです。
9. よくある質問(FAQ)
Q1. 使用料は、誰が決めているのですか?
管理事業者が、使用料規程を定め、文化庁に届け出て、概要を公表します。使用料の水準への影響力が大きい事業者は、利用者の代表からの協議の求めに応じる義務があります。
Q2. 管理手数料は、どのくらいですか?
区分ごとに異なります。報道や解説で確認できた例として、JASRACの放送等で8.5%、インタラクティブ配信で9.5%(2020年6月分配期以降)などがあります。最新の率は、各社の規程で確認してください。
Q3. 作詞家と作曲家と出版社の分配は、必ず「25%・25%・50%」ですか?
いいえ。出版社の取り分の合計は、2分の1を超えないとされていますが、実際の割合は、作品届と、出版契約で決まります。
Q4. JASRACとNexToneで、どちらが手数料が低いですか?
区分ごとに異なり、一概には言えません。自分の楽曲が、多く使われる区分の率を、各社の規程で比べてください。
Q5. 「収支差額金」とは何ですか?
JASRACで、収益が費用を上回った場合の差額です。翌年度に、権利者に分配されます。
Q6. 1再生で、いくら入りますか?
サービス、国、契約によって異なり、固定の単価はありません。本記事の計算例は、仮定に基づくものです。
10. まとめ
- 使用料は、管理事業者の使用料規程に基づいて決まり、届出、公表、協議などの手続きを経ます。
- 管理手数料は、区分ごとに異なり、変更されます。確認できた例では、放送等8.5%、インタラクティブ配信9.5%などですが、最新の率は、規程で確認が必要です。
- 作詞家、作曲家、出版社の分配の割合は、作品届と出版契約で決まります。出版社の取り分の合計は、2分の1を超えないとされています。
- 1再生あたりの金額は、仮定によって大きく変わります。ストリーミングの楽曲側の使用料だけで、生活を支えるには、多くの再生数が必要になる場合があります。
- 作品届、分配率、明細の確認と、収入源の分散が、実務では大切です。
今後のウォッチポイント
- JASRACとNexToneの、管理手数料や使用料規程の見直し
- 配信サービスの分配方式の変化(関連記事を参照)
- 2026年に公布された、レコード演奏・伝達権(録音側の新しい収入の仕組み)
- 海外の使用料の徴収の仕組みの進展
参考資料
JASRAC
- 管理手数料の引き下げ(2020年6月分配期)に関する報道:https://www.phileweb.com/news/d-av/202002/18/49752.html
- 管理手数料の引き下げ(2021年3月分配期、大規模演奏会等の率を含む)に関する報道:https://www.phileweb.com/news/d-av/202101/20/51962.html
- 管理手数料の一部引き下げ(2026年3月分配期)に関する報道:https://www.phileweb.com/sp/news/hobby/202602/03/8099.html
- 2025年度の徴収額・分配額に関する報道(2026年5月):https://www.phileweb.com/sp/news/hobby/202605/21/8234.html
- JASRACの分配の仕組みに関する解説(CDの手数料6%などを含む):https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/music_copyright/1108254.html
- JASRACのQ&A(録音権の使用料の送金など):https://secure.okbiz.jp/faq-jasrac/faq/show/2195
- インタラクティブ配信の徴収額に関する報道(2021年度):https://www.nippon.com/ja/japan-data/h01345/
分配の割合
- 作詞者・作曲者への分配(CISAC標準契約の考え方)に関する解説:https://www.all-senmonka.jp/moneyizm/77582/
NexTone
- FAQ(手数料、分配日、最低支払額、明細):https://www.nex-tone.co.jp/copyright/faq.html
- 管理のポイント(分配明細):https://www.nex-tone.co.jp/copyright/creators/advantages.html
- 事業計画及び成長可能性に関する事項(2026年6月):https://www2.jpx.co.jp/disc/70940/140120260623576631.pdf
- 有価証券報告書(海外での使用料の徴収に関する契約):https://edinetdb.jp/company/E35562/text
制度
- 著作権等管理事業法の概要(使用料規程の届出と公表、協議と裁定):https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/021/07071007/001/001.htm
本記事について
本記事は一般的な情報提供であり、法的・財務的な助言ではありません。管理手数料、分配のルール、契約は変更されることがあります。重要な判断をする際は、必ず一次情報をご確認ください。誤りや更新が必要な点にお気づきの場合は、(連絡先・問い合わせ方法)までご連絡ください。
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