契約交渉の「言い換え」図鑑②【補償・防御編】:知財補償の「防御の引き受け(Defend)」を、リスクに応じて設計する

Contract Negotiation2

前回の第1弾(基礎編)では、損害賠償の範囲、知財保証の強さ、期限の表現、生成AIの条項を、整理しました。今回の第2弾は、知財補償(IP Indemnity)条項、なかでも英文契約や大手企業のドラフトによく出てくる「Defend(防御の引き受け)」を、取り上げます。

第三者から、特許侵害などを理由に、顧客が訴えられたとき、誰が、誰の費用で、どう戦い、どう和解するのか。この設計次第で、紛争時の費用と、事業への影響が、大きく変わります。提供側と受領側の、両方の立場から、言い換えと対案を整理します。

3部作の地図

弾テーマ
第1弾 基礎編損害賠償、知財保証、期限、生成AI
第2弾(この記事)補償・防御編Indemnify/Defend、防御の主導権、和解、免責事由、通知、代替措置
第3弾 SEP編規格準拠と非侵害保証の矛盾、SEPの除外

関連する記事として、「特許非侵害保証と特許補償」、「FTO調査」も、あわせてご覧ください。

本記事は、日本法を前提とした一般的な情報提供で、法的助言ではありません。 英米法の説明は、一般的な傾向で、州や国によって異なります。条項のサンプルは、説明用です。実際の契約では、弁護士などの専門家のレビューを受けてください。

この記事でわかること

  • Indemnify/Defend/Hold Harmlessの意味と、違い
  • 「防御の引き受け」の設計:主導権、費用、利益相反、受領側の参加
  • 和解の同意、免責事由(組合せ・仕様・改変・OSSなど)
  • クレーム通知の手続きと、前提条件にすることの是非
  • 補償の対象・上限・排他的救済、代替措置
  • 日本の裁判例(知財高裁、令和5年11月8日)と、訴訟告知・補助参加の使い方
  • 条項バンクと、交渉のプレイブック

用語集(先にここだけ読んでもOK)

用語意味
補償(Indemnify)第三者の請求などによって生じた損失(賠償金、和解金、費用)を、補償すること
防御(Defend)第三者の訴訟や請求に、補償する側の費用で対応する(弁護士の手配など)義務
Hold Harmless相手方に損害を被らせない旨の約束。意味は法域によって異なり、Indemnifyとほぼ同義とされる場合もある
防御の主導権(Control of Defense)訴訟の方針、弁護士の選任、和解の交渉を、主導する権利
被補償者(Indemnitee)/補償者(Indemnitor)補償を受ける側(通常、顧客)/補償する側(通常、ベンダー)
第三者クレーム第三者からの、警告書、請求、訴訟など(どこまでを含めるかを、定義する)
免責事由(Exclusions)補償しない場合
代替措置権利の取得(procure)、修正(modify)、交換(replace)、返金(refund)
排他的救済(Sole and exclusive remedy)知的財産権の侵害については、補償条項が唯一の救済であるとする定め
訴訟告知/補助参加日本の民事訴訟で、訴訟の当事者が、利害関係のある第三者に訴訟を告知し、第三者が、一方の当事者を補助するために、訴訟に参加する仕組み(民事訴訟法第53条、第42条)

目次

クイック比較表

交渉項目❌ Before(相手方の提案)⭕ 提供側の修正案↩️ 受領側の対案🤝 折衷案の方向性
防御の主導権自らの費用で、顧客を防御する(Defend)。主導権の記載なし防御と和解を、提供側が主導。顧客は協力顧客も、自己の費用で参加。利益相反の場合は、独自の弁護士を選任提供側が主導。顧客は、自費で参加。提供側が防御を放棄したら、顧客が防御し、合理的な費用を請求
費用の範囲一切の費用賠償金、和解金、合理的な弁護士費用に限る調査費用、事業の損失も含める賠償金・和解金・合理的な弁護士費用。事業損失は、対象外
和解顧客が、自由に和解提供側の同意がない和解は、補償の対象外提供側は、顧客に義務を課す和解には、顧客の同意を要する顧客を拘束する和解は、顧客の同意(不合理に拒否・遅延しない)
免責事由なし組合せ、仕様、改変、第三者の素材は、免責免責は、必要最小限提供側が、因果関係を立証した範囲で、免責
通知記載なし迅速な書面の通知を、補償の前提条件通知の遅れは、実際の不利益の範囲に限る不利益の範囲で、補償が減る(prejudice型)
救済損害の全額代替措置(権利取得、修正、交換、返金)と、排他的救済代替措置は、機能・性能が同等であること代替措置+返金(償却控除)。排他的救済は、例外付き

1. 「Indemnify/Defend/Hold Harmless」の違い

海外企業との契約や、IT・製造業のライセンス契約では、次のような表現をよく見ます。

…shall indemnify, defend, and hold harmless…

日本語の契約書では、まとめて「補償する」と訳されがちですが、英米法の文脈では、別々の義務です。

表現一般的な意味日本の契約での扱い
Indemnify相手方に生じた損失(確定した賠償金、和解金など)を、補償する「補償する」
Defend第三者の請求・訴訟に、自己の費用で対応する(弁護士を手配し、費用を負担する)日本語の「補償」には、通常、含まれない。明記が必要
Hold Harmless相手方に、不利益を被らせない。解釈は法域により異なる「免責する」「損害を与えない」など。意味を、確認する

米国法の一般的な考え方(参考)

  • 防御義務(duty to defend)は、補償義務(duty to indemnify)より、広いとされます。防御義務は、**第三者の主張(根拠のないものを含む)**によって、早い段階で、発動し得る一方、補償義務は、責任が確定した範囲に限られるのが一般的です。
  • 勝訴しても、防御の費用は、発生します。 第三者の請求が退けられ、賠償金がゼロになっても、防御義務を負う側は、その過程の費用を、負担することになります。
  • 多くの州では、契約に書かれていなければ、補償する側に、防御義務はないとされています(州によって、異なります)。

日本の契約での注意

  • 日本語で「補償する」と書くだけでは、防御(対応)の義務が含まれるかが、曖昧です。防御の範囲と、主導権を、明記します。
  • 逆に、英文契約を日本語に訳すときは、Defendを「補償する」に、まとめてしまわないようにします。

2. 「Defend」の本質:防御と主導権は、セット

2-1. 原稿の「ブラックホール」の再整理

「Defendを受け入れると、顧客が、高額な弁護士を選んで、請求書を回す」という説明は、一般的なDefend条項の構造とは、異なります。通常のDefend条項では、次のようになります。

項目一般的な構造
防御の主体補償する側(提供側)が、防御を引き受け、弁護士を手配する
顧客の役割速やかに通知し、情報と協力を提供する。自己の費用で、参加できる場合が多い
和解提供側が、主導する。ただし、顧客を拘束する和解には、顧客の同意を要する場合が多い

つまり、リスクが生じるのは、次のような場合です。

リスク内容
① 主導権の定めがない顧客が、弁護士を選び、費用だけを、提供側に請求できると解釈され得る
② 費用の範囲が広い「一切の費用」とされ、調査費用や、過大な費用まで対象になる
③ 和解が自由顧客が、提供側に不利な条件で和解し、その補償を請求する
④ 免責がない顧客の組合せや仕様が原因でも、防御の費用を負担する
⑤ 通知の定めがない顧客が、数か月放置した後に通知し、防御の選択肢が狭まる

2-2. 提供側にとってのDefend

  • 主導権を持つことで、弁護士の選定、費用、防御の方針、和解を、コントロールできます。
  • ただし、防御を引き受けることは、費用の負担を、確定させることでもあります。防御の範囲、期間、上限を、設計します。

2-3. 受領側にとってのDefend

  • 防御を引き受けてもらうことで、費用と手間を、減らせます。
  • ただし、提供側の主導権が強すぎると、自社の事業にとって、不利な防御や和解が、行われる懸念があります(利益相反、使用停止など)。

3. 言い換えの選択肢(防御の設計)

❌ Before(相手方の提案)

甲(ベンダー)は、本製品が第三者の特許権を侵害しているとのクレームについて、自らの費用で乙(顧客)を防御し(Defend)、乙に生じた損害を補償する。

3-1. 4つのパターン

案内容向いている立場注意点
A. 防御+主導権(提供側が主導)提供側が、防御と和解を主導し、顧客は協力する提供側に有利(コントロールできる)。受領側にも、手間が少ない受領側は、利益相反、使用停止、和解の条件を懸念する
B. 受領側が防御、費用を補償顧客が、防御し、提供側が、合理的な費用を補償する受領側に有利費用の事前承認、上限、報告がないと、費用が膨らむ
C. 協力義務のみ(Cooperate)提供側は、防御は引き受けず、情報と技術的な協力を提供する提供側に有利受領側は、防御の費用を負担する。補償の範囲と、組み合わせる
D. 共同防御双方が、協力して防御し、費用を分担する折衷役割と費用の分担を、明確にする

3-2. 提供側の修正案の例

原稿の修正案:

甲は、本製品に関し第三者から乙に対して提起された特許侵害訴訟について、乙を補償する。ただし、甲は当該訴訟の防御(弁護士の選定を含む)および和解交渉を自らの主導で行う権利を有するものとし、乙は甲の防御活動に全面的に協力するものとする。

注意:「防御を引き受ける」ことを避け、「補償」と「主導権」だけを定める書き方は、提供側の責任を、軽くしようとする意図に見えます。受領側は、「主導権だけ握って、防御の費用は負担しないのか」と、懸念するかもしれません。防御の費用の負担と、主導権は、セットで提案するほうが、受け入れられやすくなります。

3-3. 受領側の対案の例

  • 提供側が防御を引き受け、主導してもよいが、顧客は、自己の費用で、独自の弁護士を参加させる権利を持つ。
  • 利益相反がある場合(提供側と顧客の利害が対立する場合)は、顧客が、独自の弁護士を選任でき、その合理的な費用を、提供側が負担する。
  • 提供側が、防御を引き受けない、または、速やかに着手しない場合は、顧客が防御し、合理的な費用を、請求できる。

4. 防御の主導権(Control of Defense)の設計

項目内容提供側の関心受領側の関心
弁護士の選任誰が、弁護士を選ぶか費用と品質を、コントロールしたい信頼できる弁護士を、確保したい
受領側の参加顧客が、自己の費用で、参加できるか二重の費用を、避けたい自社の事業への影響を、把握したい
利益相反双方の利害が、対立する場合費用が増えるのを、避けたい独自の弁護士が、必要
防御の放棄提供側が、防御を放棄、または遅延した場合—顧客が、防御を引き継ぎ、費用を請求できる
情報の提供顧客が、必要な情報・協力を提供する防御に必要な情報を、早く得たい秘密情報の扱い
防御の方針無効の主張、回避設計、ライセンスなどの、選択費用対効果で、判断したい事業への影響を、考慮してほしい
報告提供側が、進捗を報告する—状況を、把握したい

防御の手段:どこまでを、義務とするか

日本の知財高裁の判決(令和5年11月8日)は、非侵害の保証と、補償の趣旨を含む条項について、売主に、紛争の解決に向けた協力義務を認めた一方、第三者に対して、訴訟の提起や、無効審判の請求などの対抗手段を取る義務までは、負わないと判断しました(前の記事を参照)。

つまり、防御の手段として、どこまでを、義務とするかは、契約で、明確にしておくことが重要です。

手段内容検討したい点
非侵害の主張特許権者に、侵害していないと主張する基本的な手段
無効の主張特許無効審判、特許異議申立(登録後6か月以内)、訴訟での無効の抗弁誰が、費用を負担し、実施するか
回避設計製品を、変更する代替措置との関係
ライセンスの取得特許権者から、実施の許諾を受ける費用の負担、条件
和解特許権者と、解決する次章を参照

5. 和解の設計

論点内容
誰が、和解を主導するか防御を引き受けた提供側が、主導する場合が多い
顧客の同意和解が、顧客に義務を課す場合(侵害の自認、差止めに相当する義務、使用の制限、将来の支払いなど)、または、全面的な免責(full release)がない場合は、顧客の同意を要する、とする例が一般的
同意の基準「不合理に、拒否、遅延、条件付けをしない」
顧客が、和解した場合提供側の同意なく、顧客が和解した場合の和解金は、補償の対象外とする例がある
事業への制約和解は、金銭だけでなく、機能の停止、顧客への通知、製品の回収、将来の販売の制限などを、求められることがある。金銭以外の条件を、慎重に確認する
日本の判決との関係知財高裁(令和5年11月8日)は、買主が、経営判断で、第三者との間で不利益を受け入れる合意をした場合には、売主は、損害の補償義務までは負わないと判断しました(事案ごとの判断)

6. 免責事由(Exclusions)

組合せ侵害(自社の部品単体では、特許を侵害していないのに、顧客が他の部品やソフトウェアと組み合わせたことで、侵害になる場合)や、顧客の仕様に従った場合などは、提供側が、コントロールできません。

免責事由内容受領側の対案
顧客の仕様・指示顧客の仕様、指示、提供した素材に従ったことで、侵害になる場合提供側が、問題を知っていた、または、知り得た場合は、除外しない(通知の義務)
改変提供側以外による、製品の改変によって、侵害になる場合提供側の承認した改変は、除外しない
組合せ第三者の製品、ソフトウェアとの、使用や組合せによって、侵害になる場合提供側が、組合せを、想定・推奨していた場合は、除外しない(製品の仕様で想定された組合せ)
第三者の素材・OSS顧客が指定した、OSSや、第三者の素材提供側が、選定したものは、除外しない
使用方法文書・仕様に従わない使用—
継続使用提供側が、非侵害の修正版や代替品を提供した後も、旧版を使い続けた場合修正版への移行の期間と、費用を、配慮する
顧客の自己の請求顧客の関連会社などによる請求—
SEP規格に準拠するために、避けられない特許(第3弾を参照)—
生成AIの出力AIによる成果物の扱いは、第1弾と、「著作権の非侵害」の記事を参照—

因果関係の整理:免責は、「〜に起因する場合」と書くことが多いですが、起因の範囲が、争いになります。「〜がなければ、侵害は生じなかった場合に限る」などの、因果関係の基準を、定めることも、検討します。


7. クレーム通知の手続き

7-1. 前提条件にするか、不利益の範囲に限るか

方式内容立場
前提条件型「迅速な書面の通知を、補償の前提条件とする」。通知が遅れたら、補償しない提供側に有利
不利益限定型(prejudice型)通知の遅れによって、実際に、防御に不利益が生じた範囲に限り、補償が減る折衷。米国では、一般的な考え方とされる
通知は義務のみ通知の遅れは、補償の範囲に、影響しない受領側に有利

受領側の弁護士は、「迅速な通知を、防御の義務の前提条件にするべきではない」と助言する例が、あります。一方で、提供側は、数か月の放置で、防御の選択肢が狭まることを、懸念します。

7-2. 通知と対応を、段階に分ける

段階内容期限の例
① 初報(通知)第三者のクレームを受けた事実と、概要を、書面で通知する〇営業日以内(例:受領後3営業日以内)
② 対応方針提供側が、調査・分析を行い、防御の方針を提示する合理的な期間内、または、〇営業日以内
③ 進捗の報告状況の変化を、定期的に報告する〇週間ごと、または、重要な進展の都度

7-3. 何が「第三者のクレーム」か

定義内容
狭い定義訴訟の提起のみ
中間訴訟と、書面による請求(警告書、請求書)
広い定義口頭の主張、ライセンスの申し入れまで含む

知財高裁(令和5年11月8日)は、警告を受けた段階から、売主に、情報提供などの協力義務が生じる場合があると判断しました。受領側は、警告の段階から、発動する定義を求めます。提供側は、訴訟や、書面による請求に、限定することを求めます。

7-4. 日本の訴訟の道具:訴訟告知と補助参加

日本の民事訴訟には、補償する側が、訴訟に関与するための仕組みがあります。

仕組み内容
訴訟告知(民事訴訟法第53条)訴訟の当事者(顧客)が、参加することができる第三者(提供側)に、訴訟を告知する
補助参加(民事訴訟法第42条)訴訟の結果について、利害関係のある第三者(提供側)が、当事者の一方(顧客)を補助するために、訴訟に参加する。攻撃・防御の方法の提出など、一切の訴訟行為ができる(同法第45条)
参加的効力(同法第46条)補助参加をした者には、被参加人(顧客)の敗訴の判断が、一定の範囲で効力を持つ。訴訟告知を受けて参加しなかった場合も、参加できた時に参加したものとみなして、同条が適用される(同法第53条第4項)
  • 契約では、「顧客は、訴訟を提起されたとき、提供側に、訴訟告知を行う」「提供側は、補助参加することができる」と、定めておく方法があります。
  • ただし、告知者と被告知者の間に、利害の対立がある場合に、参加的効力が及ぶかは、学説が分かれるとされています。具体的な扱いは、専門家に確認してください。

8. 補償の対象・上限・排他的救済

8-1. 補償の対象

項目内容提供側受領側
賠償金確定判決(または同意した和解)による賠償金○○
和解金提供側が同意した和解の金額○○
弁護士費用合理的な弁護士費用○(範囲・上限を限定)○
調査費用特許の調査、分析の費用対象外とする含める
事業の損失使用停止による営業損失など対象外含めたい(難しいことが多い)
懲罰的損害賠償米国などで、課される場合がある対象外とする例がある含める場合がある
利息、費用訴訟費用、利息範囲を限定含める

8-2. 上限

  • 補償を、第1弾の損害賠償の上限の対象にするか、別枠にするかが、大きな論点です。
  • 提供側は、補償にも、上限を設けたい(例:過去12か月の対価)。
  • 受領側は、知的財産権の侵害に関する補償は、上限の対象外、または、高い別枠の上限を求めます。
  • 第1弾の損害賠償の上限と、補償の関係を、条項間で整合させます。結果的損害の除外(consequential damages waiver)が、補償に適用されるかも、明記します(受領側は、適用しないよう求める例が一般的です)。

8-3. 排他的救済(Sole and exclusive remedy)

提供側は、「知的財産権の侵害については、本条(補償)が、唯一の救済」とすることを求めます。受領側は、故意や重過失の場合、他の保証違反については、例外とするよう求めます。


9. 代替措置(権利取得、修正、交換、返金)

第三者の権利を侵害すると判断された場合に、製品の使用を、続けられるようにするための措置です。

措置内容注意点
① 権利の取得(procure)特許権者から、使用を続ける権利を取得する費用の負担、条件
② 修正(modify)非侵害になるよう、製品を修正する機能・性能が同等であること
③ 交換(replace)非侵害の製品に、交換する同上
④ 返金(refund)使用を終了し、代金を返金する償却控除の有無、返金の額
  • 実務のひな形では、「①〜③のいずれかを、提供側の費用と選択で行い、それが商業的に合理的でない場合に、④を行う」という順序が、よく見られます。
  • 返金の額は、「5年の定額(直線)償却を控除した額」とする例があります(購入後の経過期間に応じて、減額)。受領側は、償却の期間や、返金の対象(代金、ライセンス料、サービス料)を、確認します。
  • 返金を選ぶには、受領側の同意を要するとする例があります。
  • 標準必須特許(SEP)では、規格に準拠したまま、非侵害の仕様に修正することが、技術的に難しい場合があり、②③の代替措置が、成立しないことがあります(第3弾)。

10. 条項のサンプル(説明用)

10-1. 防御と和解

提供側に有利な傾向の例

乙は、本製品が第三者の特許権を侵害するとの請求(以下「本件請求」という。)を受けた場合、直ちに(または〇営業日以内に)甲に書面で通知する。甲は、自己の費用で、本件請求の防御および和解を主導する権利を有し、弁護士を選任する。乙は、甲の防御に必要な情報および協力を提供する。乙は、自己の費用で、独自の弁護士を参加させることができる。甲の同意なく乙が行った和解、またはそれに基づく支払いは、補償の対象としない。

受領側の対案の例

甲は、本件請求について、乙を防御し、乙が被る賠償金、和解金および合理的な弁護士費用を補償する。乙は、自己の費用で参加でき、利益相反がある場合は、独自の弁護士を選任でき、その合理的な費用は甲が負担する。甲が、〇営業日以内に防御に着手しない場合、乙は防御を行い、合理的な費用を甲に請求できる。甲は、乙に義務を課し、または全面的な免責を含まない和解を、乙の同意なく行うことはできない。

折衷案の例

甲は、本件請求の防御を引き受け、防御と和解を主導する。乙は、自己の費用で参加できる。利益相反がある場合、または甲が防御に着手しない場合は、乙は、独自の弁護士を選任でき、合理的な費用は、甲の負担とする。乙を拘束する和解(侵害の自認、使用の制限、将来の支払い、全面的な免責がないもの)には、乙の同意(不合理に拒否、遅延、条件付けをしない)を要する。

10-2. 免責

甲は、本件請求が、(a) 乙の仕様もしくは指示、(b) 甲以外による改変、(c) 本製品と第三者の製品もしくはソフトウェアとの組合せ、(d) 乙が指定した第三者の素材もしくはオープンソースソフトウェアに起因する場合は、その起因する範囲で、本条に基づく義務を負わない。ただし、甲が、当該仕様、指示、組合せが侵害となり得ることを知っていた、または、本製品の仕様書で想定していた場合は、この限りでない。

10-3. 通知

乙は、本件請求を知った場合、〇営業日以内に、甲に書面で通知する。通知の遅れにより、甲の防御に実際に不利益が生じた場合に限り、その範囲で、甲の義務は減免される。

10-4. 代替措置と排他的救済

本製品が第三者の特許権を侵害すると判断された場合、甲は、自己の費用で、(a) 乙が本製品の使用を継続できる権利を取得し、(b) 同等の機能・性能を有する、非侵害の製品に修正または交換し、または、(c) (a)(b)が商業的に合理的でない場合は、〇年の定額償却を控除した代金を、乙に返金する。本条は、知的財産権の侵害に関する甲の責任の全てを定める。ただし、甲の故意または重大な過失による場合は、この限りでない。


11. 条項バンク(3段階)

条項厳しい(受領側に有利)標準(折衷)緩やか(提供側に有利)
防御提供側が、防御を引き受ける。顧客は、自費で参加。利益相反は、独自の弁護士の費用を、提供側が負担提供側が、防御と和解を主導。顧客は、自費で参加。利益相反・防御の放棄の場合は、顧客が、合理的な費用を請求提供側が、防御と和解を主導する権利。顧客は、協力のみ
費用賠償金、和解金、弁護士費用、調査費用、事業損失賠償金、和解金、合理的な弁護士費用確定判決または同意した和解の賠償金と、合理的な弁護士費用(上限あり)
和解顧客の同意なく、和解しない顧客を拘束する和解は、顧客の同意(不合理に拒否しない)提供側が、自由に和解(顧客に金銭の負担を求めない場合)
免責限定的(提供側が知っていた場合は、除外しない)顧客の仕様、改変、組合せ、指定素材(因果関係あり)広く(顧客の仕様、改変、組合せ、第三者の素材、使用方法)
通知通知の遅れは、補償に影響しない不利益の範囲で、減免迅速な書面の通知を、前提条件とする
代替措置同等の機能・性能。返金は、受領側の同意。償却は、短期間①〜③のいずれか、困難なら④(5年定額償却)①〜④のいずれか(提供側の選択)
排他的救済なし(他の救済も可能)あり。故意・重過失は、例外あり。例外なし

12. 有事のフロー

ステップ内容
1. 警告・請求第三者から、顧客に、警告書や、訴状が届く
2. 通知(初報)顧客が、契約の期限内に、提供側に書面で通知
3. 情報の共有顧客が、請求の内容、製品の使用状況、必要な情報を、提供
4. 防御の判断提供側が、防御を引き受けるか、方針を決める(無効、回避設計、ライセンスなど)
5. 訴訟告知・補助参加(日本の訴訟の場合)顧客が、訴訟告知を行い、提供側が、補助参加を検討
6. 和解の検討顧客を拘束する和解は、顧客の同意を得る
7. 代替措置修正、交換、権利取得、返金を検討
8. 費用の精算合理的な費用を、契約に従って、負担
9. 記録の保管やり取り、費用、判断の理由を、記録
10. 専門家への相談弁護士、弁理士に、早期に相談

13. 交渉のプレイブック

13-1. 立場別の優先順位

立場譲れない点(例)譲歩できる点(例)
提供側主導権(弁護士の選任と、和解)、免責事由、上限顧客の自費での参加、利益相反時の独自の弁護士、和解の同意(顧客を拘束する場合)
受領側防御の費用負担、利益相反への対応、顧客を拘束する和解の同意提供側の主導、免責事由(因果関係の範囲)、排他的救済(例外付き)

13-2. フォールバックの例(主導権)

順位内容
第1案提供側が、防御と和解を主導。顧客は、協力
第2案提供側が主導。顧客は、自費で参加
第3案利益相反・防御の放棄の場合は、顧客が、独自の弁護士を選任し、合理的な費用を請求
最低ライン顧客を拘束する和解には、顧客の同意

13-3. 交渉のポイント

  • 主導権と費用は、セットで提案する。
  • 免責事由は、因果関係で整理し、提供側が、知っていた場合の例外を、受け入れやすくする。
  • 通知は、不利益の範囲で、減免する折衷を、提案する。
  • 補償の上限は、第1弾の損害賠償の上限と、整合させる。
  • 生成AI、SEPなど、特別な論点は、別の条項や、別の弾の考え方で、整理する。

14. AI事業者の補償プログラム(参考)

生成AIのサービスを提供する事業者の補償は、条件付きであることが多いです。

事業者特徴(公表された趣旨)
Google生成AIに関する2種類の補償を発表。事業者が承認した和解額と、裁判所が最終的に命じた賠償に限られる(解説による)。事業者の定める制限や保護措置の遵守が条件
MicrosoftCopilot Copyright Commitment(2023年9月)。ガードレールとコンテンツフィルターの使用などの条件がある

ベンダーが、AI事業者の補償を受けている場合、その範囲と、条件を、顧客との契約に反映します(第1弾を参照)。


15. 落とし穴

落とし穴対策
Defendを「補償」と訳して、範囲が曖昧防御、費用、主導権を、明記する
主導権だけを、握ろうとする費用の負担と、セットで、提案する
費用の範囲が「一切」合理的な弁護士費用、賠償金、和解金に限定する
和解の同意が曖昧顧客を拘束する和解の定義と、同意の基準(不合理に拒否しない)を、定める
免責が「起因する場合」だけ因果関係の基準と、提供側が知っていた場合の扱いを、定める
通知が前提条件で、受領側が受け入れない不利益の範囲で、減免する折衷
防御の手段が不明無効の主張、回避設計、ライセンスを、誰が、どこまで行うかを、定める
上限との矛盾第1弾の損害賠償の上限、結果的損害の除外との関係を整理する
英文の直訳日本法の概念(補償、訴訟告知など)と、整合させる
SEPの扱い第3弾を参照

16. ケーススタディ(架空の例)

以下は、イメージをつかむための架空の例です。実在の企業・案件ではありません。

ケース1:ソフトウェアのライセンス(防御と主導権)

ソフトウェア会社のA社は、製造業のB社に、ソフトウェアをライセンスしました。B社のドラフトには、「A社は、B社を防御(Defend)し、損害を補償する」とありました。

  • A社は、「防御と和解は、A社が主導。B社は、情報と協力を提供」と提案しました。
  • B社は、「A社が主導するなら、利益相反や、使用停止の懸念がある」と述べました。
  • 折衷:A社が、防御と和解を主導し、B社は、自費で参加できる。利益相反や、A社が防御に着手しない場合は、B社が、独自の弁護士を選任でき、合理的な費用をA社が負担する。B社を拘束する和解は、B社の同意を要する。

ポイントは、**「主導権と費用負担を、セットで提案」「受領側の懸念に、手続きで応える」**ことです。

ケース2:部品の供給(免責と通知)

部品メーカーのC社は、機器メーカーのD社に、通信モジュールを供給しています。D社のドラフトには、「C社は、第三者の特許クレームについて、D社を防御し、補償する」とありました。

  • C社は、「D社の仕様、改変、他社製品との組合せに起因する場合は、免責」「迅速な書面の通知を、前提条件」と提案しました。
  • D社は、「組合せは、仕様書で想定されている。通知の遅れで、補償が消滅するのは、受け入れがたい」と述べました。
  • 折衷:仕様書で想定された組合せは、免責としない。通知は、3営業日以内に初報とし、遅れによる不利益の範囲で、補償を減免する。

ポイントは、「免責の範囲を、仕様書で明確化」「通知は、不利益限定型で折衷」することです。


17. 実務のチェックリスト

確認項目内容
用語Indemnify、Defend、Hold Harmlessを、区別して書いたか
防御の主体誰が、防御を引き受け、主導するかを、明記したか
費用の範囲賠償金、和解金、合理的な弁護士費用など、対象と上限を、定めたか
受領側の参加自費での参加、利益相反時の独自の弁護士、防御の放棄時の扱いを、定めたか
防御の手段無効の主張、回避設計、ライセンスを、誰が、どこまで行うかを、定めたか
和解顧客を拘束する和解の同意、基準、金銭以外の条件を、定めたか
免責事由仕様、改変、組合せ、第三者の素材・OSS、使用方法、因果関係、例外を、整理したか
通知第三者のクレームの定義、期限、前提条件か、不利益限定型かを、決めたか
代替措置権利取得、修正、交換、返金(償却)、機能・性能の同等性を、定めたか
上限と排他的救済第1弾の損害賠償の上限、結果的損害の除外との整合、例外を、確認したか
日本の訴訟の道具訴訟告知、補助参加の扱いを、契約に反映したか
SEP・AI第3弾、第1弾の考え方を、確認したか
専門家のレビュー重要な契約を、弁護士に確認したか

18. よくある質問(FAQ)

Q1. 「補償する」と「防御する」は、何が違いますか?
「補償」は、生じた損失(賠償金、和解金など)を負担すること、「防御」は、第三者の請求に、自己の費用で対応することです。日本語の「補償」には、防御が含まれるかが、曖昧なため、明記します。

Q2. 訴訟に勝った場合も、防御の費用は、かかりますか?
防御義務を負う場合は、勝訴しても、防御の過程の費用は、発生します(米国の一般的な考え方)。費用の範囲と、上限を、契約で定めます。

Q3. Hold Harmlessは、Indemnifyと同じですか?
法域によって、異なります。ほぼ同義とされる場合もあれば、別の意味を持つとされる場合もあります。日本語に訳すときは、意味を確認します。

Q4. 防御の主導権は、必ず、提供側が持つべきですか?
提供側には、費用のコントロールのために、主導を求める理由があります。一方、受領側は、利益相反や使用停止の懸念があります。主導権と、受領側の参加、利益相反時の扱いを、セットで、設計します。

Q5. 通知の遅れで、補償は、なくなりますか?
契約の書き方によります。前提条件とする案、不利益の範囲で、減免する案、影響しないとする案があります。折衷として、不利益の範囲で、減免する案が、現実的です。

Q6. 日本の訴訟で、補償する側が、訴訟に関与できますか?
訴訟告知(民事訴訟法第53条)と、補助参加(同法第42条)の仕組みがあります。契約で、告知と、参加の方法を、定めておくことが考えられます。

Q7. 防御の手段として、無効審判を、提供側の義務にできますか?
契約で、定めることは、可能です。知財高裁(令和5年11月8日)は、条項の文言に基づいて、対抗手段を取る義務までは負わないと判断しています。義務とするなら、明記します。

Q8. 標準必須特許(SEP)は、どう扱いますか?
通常の補償と、異なる考え方が必要です。第3弾(SEP編)で、解説します。


19. まとめ

  • Indemnify(補償)、Defend(防御)、Hold Harmlessは、別の概念です。日本語の「補償」には、防御が含まれないことがあり、明記が必要です。
  • 防御義務は、補償義務より広く、第三者の主張で発動し、勝訴しても、費用が発生します(米国の一般的な考え方)。
  • Defendの本当の論点は、主導権、費用の範囲、和解、免責、通知です。主導権と費用負担を、セットで、設計します。
  • 和解は、顧客を拘束する場合の同意と、金銭以外の条件を、慎重に確認します。
  • 免責事由は、因果関係と、提供側が知っていた場合の例外で、整理します。
  • 通知は、前提条件型、不利益限定型、影響なしの中から、折衷(不利益の範囲で減免)を探ります。
  • 代替措置は、**権利取得、修正、交換、返金(償却)**の順で、設計し、排他的救済と、第1弾の上限を、整合させます。
  • 日本の訴訟では、訴訟告知と補助参加を、活用できます。
  • 次の第3弾では、標準必須特許(SEP)を、取り上げます。

今後のウォッチポイント

  • 非侵害特約・補償条項に関する、裁判例の蓄積
  • AI事業者の補償プログラムの、条件の変更
  • 知的財産取引に関する指針の運用
  • モデル契約の見直し
  • SEPに関する、各国の制度や裁判例(第3弾を参照)

参考資料

日本の裁判例・制度

モデル契約・取引の適正化

海外の一般的な実務(参考)

AI事業者の補償

費用の目安

本記事について
本記事は、日本法を前提とした一般的な情報提供であり、特定の案件についての法的助言ではありません。英米法に関する説明は、一般的な傾向で、州や国によって異なります。法令、裁判例の解釈、実務は、変更されることがあります。重要な判断をする際は、必ず一次情報と、専門家の助言をご確認ください。誤りや更新が必要な点にお気づきの場合は、(連絡先・問い合わせ方法)までご連絡ください。

この記事は、大規模言語モデル(LLM)の支援を受けて作成・編集されたものです。他の言語版は、LLMによる翻訳です。翻訳の過程で、ニュアンスや法律用語に不正確な点が生じる可能性がありますので、重要な判断をされる際は、日本語の原文と一次情報をご確認ください。

Sponsored

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次